起業に必要な会計とファイナンスの知識

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今回は起業に必要な会計とファイナンスの知識について。

最近インプットしている「会計とファイナンス」について、自身のアウトプットとしてもここにまとめていきたいと思います。そもそもファイナンスとは何か?言葉としては知っていましたが、ビジネスに関わる中でその重要性を実感するようになりました。ビジネスとどのように繋がっているのか、どう考えればいいのかを、より学びたいと思った次第です。

「分かる」と「できる」の間には大きな隔たりがある。会計やファイナンスも同様で、概念を理解していても(自分は分かっていると思っていても)、実際に「できる」ようになるには経験が必要です。例えば、会計では日々の仕訳を通じてその意味を理解し、「できる」ようになります。ファイナンスもVCからの資金調達などの実践を通じて、より深く理解することができます。

まだまだ理解度は低いと思いますが、少しでも理解を深めていくために、ここでアウトプットを続けていきたいと思います。

会計とファイナンス

会計とファイナンスとは

会計は”過去の結果”であり、ファイナンスは”未来の資金運用”を表している。

会計

会計とは、企業のお金の流れを管理するための業務のことです。管理会計と財務会計の2種類に分類されます。管理会計とは、社内で経営に重要な指標を評価するために使う会計であり、経営陣が利用する経営管理のための会計です。

財務会計は、会計基準に則り、財務状況や経営状況を外部へ報告するための会計です。管理会計は社内向け、財務会計は社外向けと覚えておくといいと思います。今後、会計という場合、財務会計を指します。財務会計では、過去の取引データを元に財務3表(B/S、P/L、C/F)を作成します。

ファイナンス

ファイナンスとは、企業価値の最大化のために、企業がどのように資金を調達しどのように運用していくべきかを考える経営戦略のひとつです。つまり、財務3表(B/S、P/L、C/F)をマネジメントすることを指します。

元mixi社長の朝倉さんの著書『ファイナンス思考』がこのファイナンスを理解するために非常にわかりやすかったのですが、その本の中で、ファイナンスの定義を「会社の価値を最大化するために、外部からの調達や事業を通じてお金を確保し、そのお金を事業への投資や資金提供者への還元に分配し、これらの経緯の合理性をステークホルダーに説明する一連の活動のこと」だとしています。

具体的に、財務3表を見ていきましょう。

財務3表(B/S、P/L、C/F)

財務3表とは、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)のことをいいます。簡単にいうと、企業の成績表と思ってもらえるとイメージしやすい。

貸借対照表(Balance Sheet:B/S)

貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)はバランスシートともいい、「決算日時点における資金の調達と運用(使い道)の状況」を表しています。決算日はもちろん企業によって様々ですが、それら決算を迎えた時点での会社の資産や負債状況などが分かります。

見方としては、まず左と右で必ず資産合計が一致するようになっています。右は他人資本(負債の部)と自己資本(純資産の部)に分かれていて、”他人から資金を得たのか、自ら資金を出したのかなど、どうやって資本・資金を得たか”が表されており、左は”その右で得た資本・資金をどういった資産(現金なのか、在庫なのか、不動産なのかなど)に変わっているか”が表されています。

右の自己資本(純資産の部)の中に利益剰余金という項目があり、ここを見ると、これまで企業が貯めてきた利益の合計金額が分かります。つまり、企業経営の中でどれだけ儲かったのかが分かります。反対にそこがマイナスであれば(Jカーブを掘るスタートアップではよくある)、ずっと赤字を垂れ流しているということです。また、右上部の他人資本(負債の部)を見れば、どれだけ金融機関などから借金(通常、金融機関からの借り入れは利子がつくので、”有”利子負債といいます)をしているのかがわかります。

ちなみに、2023年の企業の“借金王”ランキング 2位はソフトバンクグループであり、その額なんと19兆4,782億円にも及ぶみたいです。年間売上6兆にたいして、約3倍もの借金をしているのですね、、とはいえ、直近のソフトバンクの決算で、ARM社の株価上昇により、株主価値は34兆円という数字をたたき出しており、借金以上に儲かっていますね。

参考:貸借対照表とは? 財務状況を分析するための見方やポイントを解説

 

損益計算書(Profit and Loss Statement:P/L)

損益計算書は、一定期間(通常は1年間または四半期)における企業の収益と費用を確認することができるものです。文字通り、「収益」と「費用」が中心となっており、一定期間内でどれくらいの費用がかかっており、どれくらいの最終的な利益があるかが見てわかります。

私は恥ずかしながら、会社の売上を管理していく上で、これまでP/Lばかりを重視し、B/Sをほとんど意識してきておりませんでした。スタートアップではそれが普通?(普通なのかどうかもわかりませんが、、笑)なのかもしれませんが、改めてB/Sの見方を学び、他社のP/LとB/Sなどを見て「なるほど、この会社はこのビジネスで、これだけ利益が積み上がっているのだな」や「この会社の社長はSNSでフォロー数も多く発信力があるが、B/Sを見て全然儲かっていないじゃないか」など、解像度が高まり、色々と気付く機会が増えました。

このようにして、ようやくP/Lに捉われずに、B/Sを見ることが大切なのだと実感するようになりました。

キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement:C/F)

キャッシュフロー計算書とは、一定期間(通常は1年間または四半期)における資金の増減を一定の区分で表示した表のことです。

参考:キャッシュ・フロー計算書とは?計算方法や見方、作り方のポイントを解説

これら、財務3表(B/S、P/L、C/F)の関係性を表した図を見ると分かりやすいです。

毎期のPL上での税引き後純利益は貸借対照表の純資産に追加され、実際にキャッシュがどう増減したかはキャッシュフロー計算書で確認することができます。

参考:貸借対照表とは? 財務状況を分析するための見方やポイントを解説

資本コストとは

次にファイナンスを語る上で重要な「資本コスト」について見ていきましょう。私自身、ファイナンスについて学ぶまでは、資本コストという言葉は聞き慣れていませんでした。

起業する時や会社を経営する上で、資本(金融機関からの借り入れや自己資金による資金の投下、VCからの資金調達などのお金)が必要となりますが、資本には”コスト”がかかっています。具体的には、「負債コスト」と「株主資本コスト」の2つに分けられます。

負債コスト:金融機関などから調達した資本に対してかかる支払利息などのコストのこと(デッド・ファイナンス)

仮に銀行から年1.5%の金利で1,000万借り入れした場合、元本とは別に年間15万円が利息としてかかります。その1.5%が負債コストに該当します

株主資本コスト:VCなどの株主からの出資によって調達した資本にかかコストのこと(エクイティ・ファイナンス)

詳しくは朝倉さんの「ざっくり考えるVCの資本コスト」の記事がわかりやすかったです。投資されたステージにも応じて変わりますが、ざっくり投資額の20倍くらいのリターンを求められているみたいです。仮に1,000万投資されたとすると、10年後には2億円のリターンを求められていることになります。年間にならすと、20%÷10年=2%/1年となります。

上記のように、金融機関やVCなどから資本を調達した際には必ずコストがかかります。そして、この資本コストや資本金、税率などを考慮したWACC(Weighted Average Cost of Capital:加重平均資本コスト)と呼ばれる計算式がありますが、これによって会社が債権者や株主に対して還元しなければならないお金の利率の加重平均、加重平均リターンの数値を導き出します。その数値が仮に8%だとすると、それよりも高い利益率を出さないと実質的には赤字の状態ということです。

また、ある事業に対して投じたお金(株主資本と有利子負債)からどれだけの利益が得られているかを示す指標のことをROIC(Return on Invested Capital:投下資本利益率)といいます。

WACC < ROICでなければ企業は発展しないのですが、WACCがROICより低いというのは、例えば100万を年金利10%で銀行から借りてきて、年間利益5%の事業などに投資するようなものです(10%の金利に対して、5%しか儲からないので、5%が実質マイナスになります)。

ですので、事業は調達している資金コスト以上の収益性を得なければなりません。

ファイナンス思考の重要性

財務3表の見方を理解し、できるだけ実践を通じて血肉化していき、資本コストへの理解を深めることの重要さが理解できたかと思います。

個人においても、起業、企業経営においても、ファイナンスとは、いかに最適なバランスと条件で資金を調達し、その資金を使って最適に各事業に分配し、将来的な利益を生み出すのか。また、それらの一連の流れを株主などの資金提供者に対してどのように説明するのか。

これらの一連の行為、それを行うための思考法を「ファイナンス思考」といいます。起業家や経営者、企業のCFOをはじめとする財務担当、会計担当などの職種の方に限らず、いち会社員としての立場としても、とても重要な思考法です。仕訳ができればファイナンス思考が身につくかはわかりませんが、自分なりの実践、学習などを通じて身につけていくのがいいでしょう。

かく言う私も引き続き、実践を通じて学習中で、これからもアウトプットをしていきたいと思います。

参考本、参考記事

最後にわかりやすかった書籍を紹介いたします。どれも初学者向けなので、気になる本は手に取ってみてください。

ざっくり考えるVCの資本コスト|朝倉 祐介
VCがスタートアップからの出資依頼を見送る際の定番の理由に「スケールするビジネスではない」「市場規模が小さい」といったものがあります。ただ、この回答だけだとスタートアップ当事者にとっては今ひとつ何がネックなのかわかりにくいかもしれません。 これらのフレーズをもう少し細かく紐解くと「事業の成長余地が限られており、投資して...

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