「現代経済学の直感的方法」著者:長沼伸一郎
いきなり結論から。
資本主義は本質的に成長し続けなければならないという性質を持っている。
以前、Twitterなどで”非常に良書だ!”というコメントが多く手にとった一冊。著者の長沼さんは物理学専門ということで、経済を物理数学の視点から解説し、いろんな例え話でわかりやすくまとめられている。
だが、自分の理解不足もあり少々小難しく感じた。本書で一番の重要部分は第9章の「資本主義の将来はどこへ向かうのか」である。その中でのキーワードは“縮退”と“コラプサー化”だ。長期的願望より短期的願望が上回ることをコラプサー化と言っており、このコラプサー化をいかに防ぐかが重要とのことだ。資本主義は末期状態であるということを資本主義のコラプサー化と表現している。
現代は2000年以上前のローマに似ている。当時のローマでは格差社会が広がりベーシックインカムのような考え方もあったそうだが、コラプサー化の道へと進み、衰退していった。その衰退に歯止めをかけたのは利子を禁じていたイスラム勢力の台頭であった。コラプサー化に向かっている現代の資本主義も当時のイスラム勢力のような第3の力が必要だと述べている。それが何かはわからないがここにヒントがあると述べられている。
第9章は一回読んだだけでは理解ができなかった。現段階での理解は、要は人々が個人主義に走ることなく、理想の社会、より良い社会を作ることに目を向けそのために行動するようになれば資本主義の崩壊なのか縮退なのかわからないけど最悪の状況から逃れることができるということを言いたいのではないだろうか。
面白かった点
・本書では信用創造、準備金制度、金本位制などに触れている。
・2000年以上前のローマと現代の状況が似ている。当時の有力者や金持ちの中のトップが法的権力も持ち始め、皇帝へと名前を変えていった。そういった有力者がカエサルやポンペイウスであった
・周期的に破局を繰り返すことで長期的に見れば安定状態を作っている
メモ
・「資本主義というものは自転車やオートバイのようなものだ。それは止まれば倒れてしまう」
・「成長を続けなければならないというのは、資本主義というシステムが必然的に持たざるを得ない一つの宿命」
おすすめの著者なので、他の著書も合わせて紹介させて頂きたい。
物理数学の直観的方法―理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬〈普及版〉 (ブルーバックス) 新書 – 2011/9/21
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